15.3月更新   古典に学ぶ
人生は勤むるに在り。
勤むるときは則ち匱
(とぼ)しからず。
              ◇『宗名臣言行録』(丞相蘇公の頌)
                  そうめいしんげんこうろく(じょうしょうそこうのしょう)
大  要
 ひとの一生は弛(たゆ)まず努力することが最も大切だ。
勤勉は人生を豊かにしてくれる。努力することを怠らなければ暮らしに事欠くよなことはあり得ない。
解  説









人生にとって努力とは何かについて考えるとき、ドイツの文豪ゲーテの言葉を思い出す。

「涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味がわかろうはずがない」

なぜ、「涙」なのか。努力を重ねても報われない辛さ、わびしさ、運命を呪いたくなるよな惜しさ、これらの感情が鬱積(うっせき)してをさそうのである。

時に、この感情に負けそうになることもあるだろう。他人の順調を見て、それをうらやむこともあるだろう。涙の味がパンに染みついて離れないときこそ、この名言に耳を傾けるべきだ。

人生の目的は努力するそのことにあり、決して栄耀栄華(えいようえいが)を極めるためにのみあるのではないことを、しみじみといたわりのこころで教えてくれる。

「人の一生は重き荷を負うて遠き路を行くが如し。急ぐべからず」とは、徳川家康の遺訓である。

線香花火のようなはかない人生ではつまらない。消え入りそうな炎をいたわり慈しんで、火勢盛んな炎に再び戻す、これこそ人生の醍醐味(だいごみ)ではなかろうか。