古典に学ぶ


H 15.6月更新
富を欲するか、恥を忍べ、傾絶せよ、
  故旧を絶て、義と分背せよ。  
              ◇ 『 荀 子 』 大 略 篇 
大 要 富を欲するならば、恥を忍び、危険をいとわず財貨をかき集め、古い友人たちとも交際を絶ち、一切の道義心を捨て去ることだ。
          

解 説
 これは荀子が、ひとの上にたつ者の徳望について述べた言葉のなかに出てくる。荀子が、この言葉を「民の語に曰く」と言っていることからすると、当時、巷間民衆の間でかなり広くつかわれていたものと思われる。
 ただ、財貨が欲しいといっても、主題の言葉を平然と実行し得る
エネルギーとバイタリティーがなければ、その願望を成就することはできそうにない。
 人間のこころは、ことのほかデリケートにできている。
恥を忍ぶといっても並たいていのことではない。自尊心をかなぐり捨てるようでなければ、逆様に悲嘆のふちに突き落とされることになる。
 荀子がここで言わんとしているのは、
ひとの上に立つ者が、並以上に富を好むようであれば、その姿を見て下の者も同様の行為に追随するようになる。だから、よく身を慎むことが肝要である、ということだ。
 下位の者がとても追随できないような剛力でやるならともかく、
中途半端な強欲なら、はじめからもたないほうが賢明である。
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