15.10月更新  古典に学ぶ
上の政を為すや、下の情を得れば則ち治まり、下の情を得ざれば則ち乱る。                       ◇『墨子』尚同篇下
大 要

君主が政治を行うとき、国民の実情を無視すると決まって乱れる。
解 説

 墨子
は、時代的には孔子と孟子の中間に位置し、独得の合理思想を唱えた思想家である。仁愛について、孔子は父祖への敬愛を第一に置き、それを他の者に及ぼすものと考えたが、墨子はこれに反対し、肉親だからといって仁愛に差別をもうけるのは不当であるとした。これはまさに墨子の面目躍如とした言葉である。
 
国家も企業も、そして家庭も大黒柱となるひとの実態理解力如何でよくもなり悪くもなる。上にいけばいくほど気まま、わがままは許されなくなるということだ。
 『列子』の「説符篇」にある次の言葉も、上に立つ者として、絶えずこころの奥にとどめておかなければならない大切なことを教えている。
 
「国を治むるの難きは 賢を知るに在りて、自ら賢とするに在らず」
 要するに、人材を見抜くための賢さが大切なのであって、自分を賢い者に見せることではないということだ。
 
まかせるに足る人材の発掘と登用こそ、上に立つ者の大切な仕事なのである。
 
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