消費税法の改正に伴い、平成16年4月1日から商品の価格を表示する場合は、消費税・地方消費税を含んだ支払総額を表示しなければなりません。
いわゆる「総額表示の義務づけ」で、価格の比較が容易になるとする声がある一方で、総額表示への移行する際に生じる問題や導入自体を疑問視する声もあります。



値札の付け替えも面倒だが、商売にレジスターを使用していれば、その変更も求められる。
この点について財務省は、レジシステムの変更を義務付けるものではないとしているが、総額表示がスタートすると、これまでの税抜価格を元に計算する場合と、税込価格を基礎として計算した場合とで差異が生じることになる。
そして、税込価格の総額表示がスタートすれば、税抜価格を前提としている現行の制度(課税標準額に対する消費税額の特例)は意味がなくなる。
そのため同制度は16年4月1日に廃止されるが、少額・大量取引を行う事業者に配慮し、税抜価格を基礎とした代金決済を認める経過措置が設けられた。
総額表示義務の対象となる取引(対消費者取引)で「税込レジシステム」への変更が間に合わない等のやむを得ない事情により、税込決済ができない場合に限る。
値札等で総額表示義務を行っていることが条件で、税抜価格を前提とした現行の端数処理の特例措置が認められる。経過措置は3年間のみ(19年3月31日まで)。
事業者はそれまでにレジシステムを変更することを求められる。




大手レジスター・メーカーは、「税抜きから税込みへの移行はマニュアルを見れば簡単。自分でできるので料金の問題も発生しない」と話す。
個人事業者なら比較的簡単にクリアできそうだが、大型店の場合は問題がそう簡単ではない。
大型店は通常、多数の店舗の売上げ、仕入れ、税金などの経理処理を瞬時に把握するため、マスター管理を行っている。
ある大手スーパーは、「単に税抜き、税込みを変更するたけでなく、このマスター管理のシステムも変更しなければならない。これには膨大な費用がかかる」と話す。
値札の表示方法については、「チェーンストア協会では基本的に(総額表示のみで)税については別記しないということになっている。当方では議論中だが、お客様の混乱も予想されるので『¥商品価格(税込)』はどうか、という案も出ている」。




■ 社会全体で統一表示になるのは消費者にとって分かりやすい(東京都内A税理士)
 
■ 会計処理上の煩わしさが解消される。伝票は税込が主流。現実の処理になったのでは(同B税理士)
■ 価格の比較がしずらいと言うが、世間にそれを不満に思っている人はいないと思うし、税率アップのときに便乗値上げを検証できない(同C税理士)
 
■ 総額表示の義務付けには税率アップの意図が見える。間接税には痛税感がない(税率を上げたい者にとって)麻薬のようなもの(同D税理士)




総額表示は義務です。が、罰則がありません。
対応しなくてもいいのではないかと考える事業者もいるかもしれませんが、「総額表示しないと消費者団体から苦情が来るのではないかという質問を受けた」と話す埼玉県内の税理士もいらっしゃるとか。
商売するに当たっては、消費者からの苦情はなるべく避けたいところです。
         







参考資料: 週間 税のしるべ(第2616号)
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