史記のなかの『貨殖列伝』には、
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『もっともよい政治家は人民の望みに従う。つぎによい政治家は人民を利益に誘導し、これにつぐ政治家は、人民を教えさとし、これにつぐ政治家は人民を統制し、もっとも劣る政治家は人民と争う』 |
と記されている。人民の望みに従う政治家が、最善に位置しているのは、貨殖列伝にふさわしい見方である。
経済の流通は、農業者によって食い、虞(きこり=木材業者、この時代の虞には、鉱山業者もふくまれている)によって材料を出し、工業者によって物品を製造し、商業者によって売買をおこなうことで成立する。
この四者がさかんに活動して、はじめて経済流通が順調になるという。
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『農業がふるわなければ食糧は乏しい。工業生産が減少すれば物資が欠乏し、虞がはたらかねば資材は少なくなる。そうなれば、商人は品物を出荷しない。その結果、農・工・虞(食糧・商品・資材)は流通せず、経済はは萎縮する。』 |
経済機構が、どこかで目詰まりをおこすと、全体の活動が低下するのは、現代とかわらない。
また人間の活躍するのは、何のためかということについても、物欲があるからだと、あけすけに理由づけている。
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賢人が廟堂(びょうどう)で深謀を巡らし、朝廷で議論をおこない、信義を守り抜いて死ぬことも、山中に身を隠す士が、名を天下にあげようと心がけるのも、結着するところはどこにあるのか。すべて富を得るためである。 |
だから清廉の官吏も長年月のうちには富み、正直な商人として知られる者もつまるところは富を得ようと心がけているのである。富は人情として、教えられなくてもみな欲するものである。
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