19年 1月更新 所長の部屋 |
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皇后美智子さまのお言葉より ――人がいまだ歩まぬ道を―― 『road not taken』という詩の言葉があります。人が歩いた道とまだ歩んだことがない道、どちらを選ぶと言えば、絶対に『road not taken』だと思うのです。人が歩んでない道、そこを歩んで行くことこそ、とても大切だと思います。 ――島崎藤村に託して語られた『生きるかなしみ』とは―― Survive・・生き抜くこと・・Survive とは、組織の中でたくましく生きるというような意味ではありません。むしろ、どのような者にもその人生を生きる意味と価値があり、生きなければならないという意味です。 ――困難に立ち向かわれるお心―― 読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても。 子供達が自分の中に、しっかりとした根をもつために 子供達が喜びと想像の強い翼を持つために子供達が痛みを伴う愛を知るためにそして、子供達が人生の複雑さに耐え、それぞれに与えられた人生を受け入れて生き、やがて一人一人、私共全てのふるさとであるこの地球で、平和の道具となっていくために (定本「橋を架ける 子供時代の読書の思い出」 1998年すえもりブックス刊) ――「根」を持って生きる―― 根の意味はヒーニー氏が掲げたように、『自分自身の心を持って語る。そうすれば同じように人間の心を持った人を動かすことができるもの』・・その音、言葉に大変心を揺り動かされた・・と。 ――生きることの悲しみ―― 『生きている、そのことの存在自体に付随する悲しみがある。そしてそのような一人一人の悲しみはお互いに簡単に癒されるものではない。むしろ、一人一人がそのような悲しみを背負っていることを、互いに認め合う、それが大切なのではないでしょうか。人にはお互いに他人の中に入っていってはいけない、むしろいくべきでない領分というものがあるのではないでしょうか。しかしそれぞれに悲しみを背負っているのです。』 『人は互いに独立した存在であり、だからこそ、その人の存在の価値があり、そして他人はその人の心の中、悲しみに入り込んでいくことはできません。しかし、お互いが悲しみを背負った存在であること、それをいつも思いやることが大切です。』
文藝春秋 11月号 皇后美智子さまとの対話・・小池政行より |
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