4. 諸要因における改善策
@ 生産関連
過剰生産、過剰在庫、過剰設備、設備の旧式化、品質管理の欠如が考えられる。
まずは、部下の能力を適切に見極め、適材適所でその能力を最大限に活用できるよう責任者、管理者を育て、常にコスト意識を持たせるようにすれば、過剰生産等の無駄は排除できる。
A 組織関連
組織の肥大、組織の硬直化、間接(事務)部門の肥大、管理階層の過剰、情報経路の不備などがある。
組織を効果的に執行することは良いマネジメントの職責である。
職務の力(仕事に就くことにより生じる力)
人間の力(仕事で活用されその中で育つ力)
変容する組織の力(仕事の中で生まれる力)
を活用し、意思決定システムを、権限と責任を委譲したやり方に改める。部下は権限を委譲されると、権限の委譲や情報の共有、部下の指導育成により前向きになり、また自らの事業運営の中でより多くの自由や自主性を与える傾向にあることが研究によって確認されている。
B 経営関連
意思決定の遅れ、経営者の強権(ワンマン)化、経営の内紛、中間管理の肥大などがある。同族経営に見られがちなファミリー主導の経営である。
同族経営の最大の弱点は経営に狂いが生じたとき、それに歯止めをかけるブレーキが効きにくい点である。傲慢で自己満足に陥り、問題を先送りにしている。多くの日本企業に共通する「企業統治の不在」が考えられる。ファミリーの呪縛による経営を改革し、そこにある暗黙の企業文化の創造的破壊を行い、経営の本質である企業の存続と繁栄に必要な措置をとるべきである。
C 人的関連
従業員教育の欠如、従業員の士気低下、労使関係の悪化、人件費の固定化などがある。
企業経営は人の営みであり、異質で多用な人間が集まって活力が生まれる。個を活かし、全体の力となったとき、企業は信じられないほどの力を発揮する。従って、全ての人材を活用できるよう想像力を活かし、部下たちが喜んで苦労するように持っていく経営者の才能が必要である。そして、従業員の仕事と生活の統合に長期的な悪影響が出ないように組織変革を管理する。
D 財務関連
資金回転の鈍化、取引先の倒産、不良債権、過剰債務、高利子負債、他社の債務保証、投機的外部運用などがある。
企業の効率化と量から付加価値への転換を進め高コスト体質の是正を行う。そのためには経営者は常に世の中の動きに目を光らせ、競争低下をくい止め、長期の成長を期さなければならない。
E 市場関連
オリジナル商品の欠如、競合輸入品の代頭、他業種からの参入、プロダクト・ライフサイクルの短縮、他社の追い上げ、新製品の不評、クレーム処理の不備などがある。
ビジネスプロセスにおいて、品質やサービス、スピードを向上させるために組織中のプロセスとペーパーワークを合理化する、情報システムは改善され、職務上の肩書きを拡大し従業員はエンパワーメントを受け、説明責任を重くする。マネジメントが日常的に顧客と接触すること、企業内部に顧客の代弁者を組織すること、そして意思決定に顧客の尺度を導入すること。これらは移り変わる市場の要求に、企業が確実に対応する上で役立つものである。
F 研究関連
製品開発の遅れ、基礎研究の欠如などがある。
経営者が常に危機意識を持っていれば、それが新規事業や新製品開発に駆り立てる原動力になる。良ければ良いなりに、必死でやらなければその良さを維持できないし、たえず新製品を開発しなければ、現状維持さえできない。
G 事業関連
経営計画のずさん、新規事業の失敗、子会社の損失、海外進出の失敗などがある。
特に海外進出や新規事業の立ち上げなど綿密な経営計画を立て慎重でなければならない。仮に失敗と見込まれた場合はためらわずに撤退する決断と勇気が必要である。
H 社会関連
欠陥商品、経営不祥事(違法行為)、内部告発、消費者からの訴訟、広報の欠如、メディア対応の失敗などがある。
消費者は自分たちの好みにかなった社会観を持つ企業を支持するようになった。倫理的に行動し社会問題に貢献していれば長期的にはビジネスの成功につながるのではないだろうか。現に経営不祥事を犯した企業の経営破綻は既に述べたとおりである。社会的主張に合うと評価されれば、従業員のモラルを高め、採用の際にも良い人材が集まるに違いない。また、従業員も自分たちの会社が世間から評価されていると感じると、会社への忠誠心が強くなり、幸福にもなる。そのような企業には内部告発などありうるはずがない。現在、成長している企業の共通項は、社会貢献に重きを置いている企業となっている。
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