第三回  印紙税完結編  14. 11/1
  それでは早速始めます。
誤った税務署の『 殺し文句
印紙税の調査もほぼ終わる頃、税務署の調査官がこのように発言されます。
印紙の貼り付け洩れがありますね。印紙を貼っていない分については過怠税として3倍納付してもらいますよ。でもこの申出を出してもらえれば1.1倍で済ますことが出来ますがどうしますか?
         と、『 印紙税不納付事実申出書 』を見せるのです。
 だらしない税理士の安堵の顔 

納税者も税理士も3倍払わなければいけないところを印紙税が
1.1倍で調査が終了する。願ったり叶ったりではないかとばかり、「はい、申出を提出しますので後はよろしくお願いします。」で終結。
“なんとなんと税理士さんよ!しっかりしてよ!”と云いたいですよね。

 この申出を提出するという事は、
納税者自らが“わたしはこの課税文書に印紙税を貼らなかったことを認めますので、過怠税を軽減してください。”という書類ですよ。
このような重要な内容の申出を推計課税しようとする
税務署の言いなりのまま提出するのですか。
印紙税不納付事実申出書とは 
この申出書は、作成した課税文書に印紙税を納付していない旨の内容を記載し、申出をする。
 
 例えば、
   @ついうっかり貼るのを忘れていた。
   A認識不足であった。
   B貼らなければいけないのを、後で気づいた...etc 
           の時に、税務署に提出し、納付するものなのです。
 調査時に、過怠税(3倍)の決定が予知されている時、調査を開始した後にこの申出を出しても、また、交付先の調査で不納付が確認された文書について申出を出しても、この1.1倍の軽減規定の適用はありません
 ましてや、調査終了時にこれで解決させようとするのは税法の誤った解釈そのものです。
 安易に調査を終わらせようとする税理士先生に猛省を感じます。
この事実は長崎だけでなく、佐賀・福岡でも発生しております。
課税文書と非課税文書の混乱
 ある時、社内文書作業指図書を見た調査官が、
「これは請負契約になりますね。印紙を貼る必要があります。」と言われ、びっくりしたのは納税者です。
 この作業指図書は、購入された物品を取付ける為の店頭と取付現場の社内文書で、購入された相手先には交付していないのです。これは、前回お話しましたように、「
交付された時」に課税関係が生じますので、非課税文書となります。
このように、様々な社内文書・対外文書の中には、課税文書なのか、非課税文書なのか区分するのが極めて難しいものがあります。税に疎い納税者はなおさらの事でしょう。だから、この様な時ほど我々税理士が十分に調べてから満足できるような説明をして差し上げるべきなのです。
印紙税撤廃を訴えよう。
印紙税は経済流通面で流通行為に伴って作成された文書のうち、一般的にそのものが出現した背景には相当の経済的利益が存在し、軽度な補完的課税の対象に取り上げてしかるべき文書に課せられる税である。(税理士会報448号)
消費税の導入に際し、一部軽減が認められましたが、ペーパーレス化、FAX、インターネット等の取引が盛んに行われる現在、負担の均衡が損なわれている面が大いに発生しております。

又、過怠税が3倍というのも、担税力のない印紙税に、法人税、所得税の重加算税より重い課税をすることに租税の不平等を感じます。
 税理士界では毎年廃止を訴えておりますが、このことは、
経済界、特に印紙をよく使う建築・土木業界、不動産業界等々も同時に廃止を訴えるべきだと思いますが、如何でしょう。
 
 〜 終わりに 〜
印紙税は非常に難しく、我々も不得手な分野でもあります。
私の尊敬する、福岡の太田隆良先生はすべての税に精通されておられ、常々我々に適切なアドバイスを頂いておりますが、「少なくとも税理士は  のつく諸問題には弱い納税者の為に積極的に解決させてやらなければいけない」と仰言っておられます。まさに、常に勉強なのです。
さて、印紙税については、これにて取りあえず終わりますが、まだまだいろんな諸問題をかかえております。今後は事例が発生した都度お知らせいたします。
また、皆さんに誤解のないように、 私は 反税団体に所属しておりませんし、反税主義者でもありません。むしろ、納税推進派であります。税金を納めない個人事業者や法人には「税金を納める位、儲からないと商売する意味がない。」と叱咤激励している私であることをご承知おき下さい。
では、12月1日にお会いしましょう。
次回は、“情けない二代目社長の行方”についてお話しします。